教員紹介

梅山 いつき

梅山 いつき
准教授
所属 文芸学部 芸術学科舞台芸術専攻
総合文化研究科
学位 博士(文学)
専門 小劇場演劇を中心とした日本の現代演劇
コメント 1960~70年代の小劇場演劇を中心とする日本の現代演劇を社会情勢と共に考察しています。また、身体、言語、演技の変遷を研究する他、野外劇をめぐるフィールドワークも展開しています。
備考 <報道関連出演・掲載一覧>
●2024/7/15
 朝日新聞
 歌舞伎について
●2024/5/15
 毎日新聞
 寄稿 追悼 唐十郎さん
●2024/5/12
 毎日新聞
 早稲田小劇場について
リサーチマップ https://researchmap.jp/read0141255

“はてな”を大切に、
作品に刻まれた思考の跡を楽しもう

政治の風が吹き荒れた1960年代。現代演劇は大きな転換点を迎えました。“アングラ演劇”と呼ばれた演劇集団は、それまで「こうあるべき」と思われてきた表現のかたちを疑い、実験的で自由な発想に基づく舞台を次々と発表していきました。時にそれは荒々しく暴力的であったり、なかなか理解しがたい物語であったり、どこか近づきにくくもありました。にもかかわらず、多くのアングラ演劇は国を超え、文化の異なる人々を魅了していったのです。たとえば、演劇実験室・天井桟敷を率いた寺山修司。彼の演劇作品は知らなくても、俳句や短歌なら教科書で目にしたことがある人も多いのではないでしょうか?彼は劇団を旗揚げする時に、「見世物小屋の復権」を唱えました。見世物小屋といわれてもあまりピンとこないかもしれませんが、今でも大きなお祭りであれば見ることができます。いかがわしくて、見てはいけないような気がするけど、つい覗いてみたくなる世界です。そんな見世物小屋のような演劇をこころざしたわけですから、その舞台は奇をてらった猥雑な雰囲気のものも多かった。また、日本の古い風土に根ざす表現でもあった。ところが、彼の舞台はアメリカ、フランス、ドイツ、果てはイランに至るまで広く世界各国で高く評価されたのです。一体、何が多くの観客のこころをとらえたのか?おそらく、彼の作品には文化や時代を超えた普遍的な「問い」が込められているのだと思います。寺山はこのような言葉を残しています。 私の将来の志願は権力家でも小市民でもなかった。映画スタアでも運動家でも、職業作家でもなかった。地球儀を見ながら私は「偉大な思想などにはならなくともいいから、偉大な質問になりたい」と思っていたのである。(寺山修司『田園に死す』より) 冒頭書いたように、60年代は政治の季節といわれた時代です。とはいえ、寺山修司や唐十郎、佐藤信、清水邦夫、鈴木忠志、そして別役実といった演劇人たちがつくりあげた作品は期間限定のものではありません。時代を超えて、現代にも通じる大きな問いをわたしたちに投げかけてくれます。そしてこれはアングラ演劇に限ったことではありません。舞台芸術とは、かたちを残しておけない一回限りの芸術です。だからといって、幕が閉じると同時に作品の賞味期限が切れるわけではないのです。舞台を学ぶとき、なぜ過去の作品に触れる必要があるのかというと、それは知識としての歴史を知るためではありません。そう考えた途端、作品は色褪せ、つまらないものになってしまいます。作品のなかに隠された問いを見つけ出すこと。その作業を通じて、自分のなかにある「はてな」に気づくことが重要だと思います。たくさんの作品に触れ、日々の暮らしのなかでは見過ごしてしまう疑問を発見しましょう。

学歴/経歴

学歴

  • 2007年4月 - 2011年3月
    早稲田大学 大学院文学研究科博士後期課程
  • 2005年4月 - 2007年3月
    早稲田大学 大学院文学研究科修士課程
  • 2000年4月 - 2004年3月
    東京学芸大学 その他

経歴

  • 2014年4月 - 2016年3月
    早稲田大学坪内博士記念演劇博物館 助教
  • 2012年4月 - 2014年3月
    日本学術振興会 特別研究員PD
  • 2011年4月 - 2012年3月
    早稲田大学坪内博士記念演劇博物館グローバルCOEプログラム演劇・映像の国際的教育研究拠点 リサーチアシスタント
  • 2008年4月 - 2011年3月
    早稲田大学坪内博士記念演劇博物館 助手

研究活動情報

研究分野

  • 人文・社会, 美学、芸術論
  • 人文・社会, 日本文学

研究キーワード

1960年代の社会と文化, 野外劇, 日本近現代演劇

論文

  1. 世界的であると同時にローカルな新しい伝統の創出ーー鈴木忠志と早稲田小劇場の1976年の転身をめぐってーー
    梅山いつき
    思想  (8(1204))  156-169  2024年8月 
  2. 篠田正浩作品にみる山田太一と寺山修司の敗者像
    梅山いつき
    ユリイカ  56  (5)  265-275  2024年3月 
  3. 「憎悪」の文学者から「沈黙」の職業芸術家へ――「ホクロ・ソーセーヂ」を中心とした別役実初期作品研究
    梅山いつき
    演劇研究  (46)  2023年3月  [査読有り]

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書籍等出版物

  1. 小劇場演劇とは何か (立教大学日文叢書 1) , 後藤隆基編 , アングラ演劇とその時代 , アングラ演劇とその時代 , ひつじ書房 , 2022年4月18日
  2. 別役実の風景 , べつやくれい; 石澤秀二; 貝山武久; 喜志哲雄; 平田オリザ; 岩松了; 松本修; 小森美巳; 平井久美子; 鈴木忠志; 藤原新平; 角野卓造; スズキコージ; 小室等; 小笠原昌夫; 川上正沙子; 芹沢俊介; 喜多哲正; 是永海南男; 堀間善憲; 砂山幸彦; 梶原礼之; 野田映史; 有馬弘純; 岡室美奈子; 梅山いつき; 内田洋一 , ソーセージにホクロはあるのか?——処女戯曲にみる別役実の挑戦 , ソーセージにホクロはあるのか?——処女戯曲にみる別役実の挑戦 , 論創社 , 2022年1月21日
  3. 別役実のつくりかた――幻の処女戯曲からそよそよ族へ , 岡室美奈子; 梅山いつき , 早稲田大学坪内博士記念演劇博物館 , 2021年5月17日

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講演・口頭発表等

  1. 劇場はだれのもの? 「演劇の確信犯 佐藤信」展示開催記念トークイベント , 佐藤信; 吉見俊哉; 梅山いつき , 早稲田大学小野記念講堂 , 2023年7月25日
  2. 遊びの場としての野外劇ー予期せぬ「ノイズ」を取り込む創造のエネルギー , 梅山いつき; 住本賢一 , ゲンロンカフェ , 2023年4月22日
  3. 鼎談「現代演劇の場所」 , 永井愛; 西堂行人; 梅山いつき , 明治学院大学 , 2023年3月11日

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MISC

  1. 劇評「劇団不労社「MUMBLE ーモグモグ・モゴモゴー」公演評 噛みごたえ十分な不条理世界」 , 梅山いつき , ロームシアター京都WEBマガジン「SPIN-OFF」 , 2024年4月1日
  2. 解説「態変『ニライカナイー命の分水嶺』」 , 梅山いつき , COMPASS コンパス〜EPADコンテンツを活用するための羅針盤〜 , 14 , 15 , 2023年12月10日
  3. 「世界」と集団で遊んだ男ーー流山児祥『敗れざる者たちの演劇志』書評 , 梅山いつき , 図書新聞 , 3608 , 2023年9月23日

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受賞

  1. 2021年3月, AICT国際演劇評論家協会, 第26回AICT演劇評論賞
  2. 2013年7月, AICT国際演劇評論家協会, 第18回AICT演劇評論賞

共同研究・競争的資金等の研究課題

  1. 日本学術振興会, 科研費基盤C, コロナ禍における小劇場の活動変容と新たなネットワーク創造に関する調査 , 近畿大学
  2. 文部科学省, 早稲田大学演劇博物館演劇映像学連携研究拠点, 別役実草稿研究 , 早稲田大学坪内博士記念演劇博物館
  3. 科研費, 基盤C, 演劇と市民社会:佐藤信による劇場創造とアジア演劇との交流事業に関する調査

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