臨界60周年にあたり(学長メッセージ(令和3年当時))
祝 近畿大学原子炉の臨界60周年
近畿大学学長 細井美彦
近畿大学原子炉の臨界60周年を迎えられたとのこと、誠におめでとうございます。
近畿大学原子炉は、昭和34年(1959年)東京国際見本市晴海会場に米国が出展していた小型の研究教育用原子炉ですが、将来原子力が重要なエネルギー資源になり、その技術者を養成する必要性を強く感じていた世耕弘一近畿大学初代総長・理事長が購入に奔走して本部東大阪キャンパスに設置したものです。1961年11月11日に臨界に達して、民間及び大学1号炉として誕生しました。また、同年次に理工学部に原子炉工学科を設立して、原子炉を用いての人材育成を開始し、これまでに多くの学生が原子炉実習を通して学んできました。実物の原子炉を用いた教育・研究を通じて将来の原子力・放射線関連技術開発や研究を担う人材を育成していくことは、建学の精神である『未来志向の「実学教育と人格の陶冶」』と合致するところです。
近畿大学原子炉は、私立大学の原子炉ではありますが、日本で数少ない大学所有の原子炉ですので、教育や研究に供するようにとの日本学術会議の勧告を受領して、1981年から全国の研究者が利用研究できるようにと共同利用研究を発足しました。この共同利用研究は今年度まで継続しています。また、原子炉を持つ大学は、京都大学と近畿大学のみになってしまいましたが、我が国の原子力人材育成において、教育用原子炉を用いた実習拠点として、全国規模での貢献をしています。
真の「実学」とは、必ずしも直接的な有用性を志向するだけではなく、その事柄の意味を学び取ることを意味します。近畿大学原子炉は、熱出力1W(1ワット)の極低出力であり、発電用でない原子炉ですが、原子炉本体の構成が簡素であり、主要なものが一つの視野に入り親近感を持てるので、構造と原理を理解しやすくなっています。原子炉を学ぶのに適した原子炉です。
原子炉利用のための施設維持は、原子炉等規制法の下で厳格な管理が要求されます。これまでの施設維持は、原子力研究所の教職員の皆様の努力の成果と感謝しております。
来年4月に理工学部にエネルギー物質学科を新設します。脱炭素社会実現に向かっていく次世代エネルギーインフラの中で、原子力は選択肢の一つです。60年前に原子炉を誕生させた初代総長の想いは引き継がれています。
近畿大学学園は、2025年に創立100周年を迎え、さらに続く未来に向けて、建学の精神を生かした教育・研究を進めてまいります。そこで、近畿大学原子炉は、これからも近畿大学学園の貴重な財産として、手厚い教育と優れた研究力を軸に、地域社会と未来のエネルギーに貢献し続ける教育アイテムとして、活用されることを期待しています。
最後になりましたが、皆様におかれましては、どうかこれからも近畿大学原子炉、そして近畿大学を厚くご支援いただきますようお願い申し上げ、ご挨拶に代えさせていただきます。臨界60周年、誠におめでとうございます。
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