近大理工通信
令和5年度 近大理工通信(第3号)
令和5年10月6日発行
コラム
近畿大学初の超小型人工衛星「SpaceTuna1(宇宙マグロ1号)」が、2022年11月7日に宇宙へ打ち上げられました。
電気電子通信工学科 前田 佳伸准教授、理学科物理学コース信川 久実子講師と学生らの研究グループが、株式会社エクセディと共同で開発した、10 cm 角の超小型人工衛星「SpaceTuna1(宇宙マグロ1号)」(写真1)が、宇宙へ打ち上げられました。
2022年11月7日、ノースロップ・グラマン社のシグナス(NG-18)に搭載された「SpaceTuna1」は、米国バージニア州ワロップス島から国際宇宙ステーションへ出発しました。その後、12月2日に国際宇宙ステーション(ISS)の「きぼう」日本実験棟から宇宙空間へ放出されました。放出当日は学内でパブリックビューイングを行い、関係者一同で放出の瞬間を見守りました(写真2)。
「SpaceTuna1」には、前田准教授と日本カーバイド工業株式会社が共同開発した再帰性反射材シートが装着されています。放出後は、近畿大学と共同研究を行なう国立研究開発法人 情報通信研究機構 宇宙通信システム研究室協力のもと、同研究室の光地上局の大型望遠鏡による追尾と、衛星へのレーザーを照射を行いました。現在、取得したデータを解析中です。
なお、「SpaceTuna1」と同時に放出された他の超小型衛星が2023年4月から6月にかけて順次大気圏に突入したこと、また、米国の連合宇宙運用センター(CSpOC) が、「SpaceTuna1」の軌道情報を更新しなくなったこと、などを総合的に判断し、「SpaceTuna1」も同時期に大気圏に突入し消滅したと考えています。
(理学科物理学コース 信川 久実子)
新人自己紹介も兼ねて
エネルギー物質学科の鬼頭宏任と申します。今回は、新人(と言っても執筆時点で着任して既に1年半経っていますが)の自己紹介も兼ねてコラム執筆の機会を頂きました。私の専門は、化学物理学・生物物理学の理論研究で、特に量子力学の基礎理論と計算機シミュレーションに基づいて、光合成や有機太陽電池の光電エネルギー変換メカニズムを理解することを主な研究テーマとしています。専門が物理・化学・生物の学問横断的領域になっていることもあり、平成18年3月に名古屋大学の物理学科で博士号をとった後、総合学術研究科、化学科、大型計算機センター、システム情報学研究科、と所属も横断的に変わっていき、令和4年にスタートしたエネルギー物質学科に着任いたしました。
エネルギー物質学科は、化学、電気電子工学、機械工学、生命科学の4分野を融合した3つのエネルギー領域(次世代インフラ、ライフデバイス、マテリアル創製)からなるユニークなカリキュラムが用意されており、全ての学生はまずは3領域で基礎を学んだのちに、各領域の専門分野を選択して学ぶことで、エネルギー分野のエキスパートとして成長していくことになります。分野横断的研究を志向する私はこの学科の持つ学際的雰囲気が大好きで、化学と生物の基礎を大学の授業で学ぶ機会が無かった身としては、このカリキュラムで学ぶことができる学生をとても羨ましいと思っています。と言っておきながら、原子力エネルギー関連の電気電子工学や機械工学の専門的な話については、最初は聞いてもよく分からず、学科としての新4年生や新大学院生が誕生し、彼らが卒研や修論発表するまでに、せめてある程度までは理解できるレベルにならなければ、と考えていました。そこで、現在進行形で大変助けになっているのが「エネルギー物質コロキウム」です。
水曜日5限に開催されている「エネルギー物質コロキウム」では、学外から先生を招待して最新研究について講演して頂く回と、エネルギー物質学科と原子力研究所の研究室に所属している総合理工学研究科の大学院生が自分の研究テーマについて紹介する回があります。持ち回りで担当する各研究室の大学院生は毎回、分野外の学生にも研究の背景や重要性、研究手法が分かるように、とても工夫したプレゼンを行なってくれます。たまに、専門外の学生や教員(私)から的外れな質問が出ても、理解できるよう頑張って回答してくれます。この「エネルギー物質コロキウム」で、私は毎回、楽しんで門前の小僧になり、新規テーマ探索への良い刺激を貰っています。ご興味がある方は、是非一度、ご参加ください。
(エネルギー物質学科 鬼頭 宏任)