近大理工通信
令和5年度 近大理工通信(第3号)
令和5年10月6日発行
教育・研究
現代的視点に基づく量子力学の教科書を出版
量子力学を基礎から学べる「コア・テキスト 量子力学 基礎概念から発展的内容まで」(理学科物理学コース・三角樹弘准教授著)が出版されました。本書は理工系の学部学生を対象にした量子力学の入門書であり、初学者向けに具体的な現象の紹介や線形代数に基づく理論的背景の解説からスタートしています。また量子もつれ状態や場の量子論などの現代的な話題も取り入れた現代的な教科書となっています。
https://www.saiensu.co.jp/search/?isbn=978-4-7819-1570-8&y=2023
(理学科物理学コース 三角 樹弘)
杉本邦久 教授が学術変革領域研究(A)の計画研究の研究代表者として採択
化学コースの杉本 教授が参画している学術変革領域研究(A) 研究領域「超セラミックス:分子が拓く無機材料のフロンティア」が採択され、杉本教授は計画研究の研究代表者として革新的な特性や機能を有する新材料の創製を目指します。
杉本 教授のテーマ「超セラミックスの高度構造解析」 研究期間2022年06月16日~2027年03月31日
https://supraceramics.jp/
今後の最新の研究成果が期待されます。
(化学コース 神山 匡)
杉本邦久 教授(近畿大)、東北大学金属材料研究所、高輝度光科学研究センターの共同研究が Chemical Scienceに掲載
近畿大学理工学部理学科化学コースの杉本邦久 教授および公益財団法人高輝度光科学研究センターの河口彰吾 主幹研究員らは、国立大学法人東北大学金属材料研究所の高坂亘 准教授、宮坂等 教授の研究グループとの共同研究として、二酸化炭素がミクロレベルの穴に吸着することにより磁石の性質を制御できる材料を世界で初めて開発しました。
X線による解析に基づいて、ガス分子が吸脱着した構造を可視化することにより、磁石の性質の変化が、単純な機構で生じていることを明らかにしました。
この成果は、磁性材料に応用が期待される基礎研究であり、トップジャーナルの一つであるChemical Scienceに掲載されました。
近畿大学プレスリリースHP
URL https://newscast.jp/news/8177843
英国王立化学会誌Chemical Science
タイトル Inter-layer magnetic tuning by gas adsorption in π-stacked pillared-layer framework magnets
著者 Wataru Kosaka, Honoka Nemoto, Kohei Nagano, Shogo Kawaguchi, Kunihisa Sugimoto and Hitoshi Miyasaka
Chem. Sci., 2023, 14, 791-800.
https://doi.org/10.1039/D2SC06337ADOI
DOI org/10.1039/D2SC06337A
(化学コース 神山 匡)
森澤勇介 准教授が二国間交流事業オープンパートナーシップ共同研究(独立行政法人日本学術振興会)に採択
森澤勇介 准教授が独立行政法人日本学術振興会の二国間交流事業オープンパートナーシップ共同研究に採択されました。実施期間は2年間の2022年4月~2024年3月です。
研究タイトルは「遠紫外―シンクロトロン連続放射光共鳴ラマン分光法による細胞中生体分子の非破壊分析」です。
イタリアとの海外共同研究を推進していきます。
(化学コース 神山 匡)
『雨もキノコも鼻クソも大気微生物の世界 気候・健康・発酵とバイオエアロゾル』 牧 輝弥 著
鼻クソや雪の中には空から降ってきた微生物だらけ。決して食べてはいけません!
大気圏では、多種多様な微生物が空を飛んで何万キロも旅をしています。空は微生物であふれていることがわかってきました。彼らは、どこからやってきて、ヒトにどんな影響を与えているのでしょうか。
気球や飛行機、ヘリコプターを使った独自の微生物採取手法を開発した著者が、実験・研究の工夫、苦労、成功談などをおりまぜながら、大気中の微生物の意外な移動の軌跡と、彼らの気候や健康、食べ物、環境などへの影響を探る、異色サイエンスノンフィクションです。
(生命科学科 環境微生物学研究室 牧 輝弥)
世界がキャンパス!! 応用化学科-ZOOMによるリアルタイム海外バーチャル留学・学生目線による理工学部紹介VR360度動画の作成
近畿大学理工学部教育改革・学生支援プロジェクト「国際的学士・修士育成のための国際横断グローバルプロジェクト」(代表:応用化学科准教授 今井喜胤)において、応用化学科、物質系工学専攻の学生を対象に、国際グローバル化プロジェクトを実施しました。
本プロジェクトは、応用化学科において専門的な「科学技術英語」を担当する今井、中井英隆准教授(令和4年度よりエネルギー物質学科)と教養・基礎教育部門の荒木瑞夫教授、照井雅子准教授、吉田諭史講師、三木浩平特任講師に御協力いただき実施したものです。
「世界がキャンパス」を合言葉に、昨年度に引き続き、理工学部応用化学科3年生と大学院総合理工学研究科物質系工学専攻の博士前期課程1年生を対象に、リアルタイムオンライン海外大学・研究室訪問を行いました。応用化学科 杉目恒志講師が、アメリカボストンで開催された国際学会「MRS Fall Meeting & Exhibit」で招待講演を行うのに伴い、杉目講師と、ハーバード大学博士課程に留学中の村元恵理さんに、リアルタイムでハーバード大学を案内していただきました。
また、Zoomによる国際交流として、Shafikul Islamさん(バングラディシュから東京都立大学に博士課程の学生として日本に留学中で日本語は話せない)を、オンライン訪問し、「世界の大学生とリアルディスカッション」と題して、リアルタイム国際交流を実施しました。前年度英語で作成した学生目線の国際交流英語動画を駆使し、お互いの文化や研究生活・研究内容について充実した交流を行うことができました。
英語力向上のため、英語学習法に関するハイブリッド講演会として、ジュディー野口先生(神戸学院大学名誉教授)をお招きし、「専門家としてグローバル社会で活躍するための英語術」というタイトルで、対面およびZoomを用いたハイブリッドでの講演会を実施しました。専門家としての英語の学び方から研究論文の体系的・効果的な受信・発信方法などを具体的に紹介いただきました。
前年度、本プロジェクトでは「学生による近畿大学英語紹介動画」を作成しましたが、あくまで2次元の動画であり、より臨場感を持って国際交流を行うために、学生による理工学部実験施設・研究室紹介360度VR(仮想現実)英語動画を作成しました。これにより、相手国学生も、自分の操作で360度近畿大学の様子を見ることができ、国際交流が加速できることが期待されます。なお、本動画は、近畿大学の公式YouTubeチャンネルで公開されていますので、何かのイベントに御自由にお使いいただくことが可能となっています。
さらに、本プロジェクトの成果を生かし、物質系工学専攻の大学院生が、国際学会International CPL and CPEL Conference 2023 in Osaka, JAPAN (ICCC2023)にて、学会運営のサポートと口頭発表を行いました。口頭発表では、照井先生、ルドルフ・ナサニエル先生に御指導いただき、これまでのプロジェクト成果の集大成として、1名の学生が優秀講演賞を獲得するという快挙を達成しています。
最後に、本プロジェクトは、理工学部学生センター、応用化学科の多大なる協力のもと、近畿大学教育改革・学生支援プロジェクト助成金によって実施されました。ここに感謝申し上げます。
(応用化学科 今井 喜胤)
深刻な雷災害に悩むマレーシアの防災に貢献 地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)に採択
電気電子通信工学科教授 森本 健志を代表とする、中部大学、岐阜大学、電気通信大学、福井大学、音羽電機工業株式会社との共同研究「持続可能なエネルギー供給と極端気象災害の早期警報のための電荷分布リアルタイム3Dイメージングと雷活動予測」が、国際科学技術共同研究推進事業である地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)に採択されました。
本研究は、年間の発雷日が200日を超え、深刻な雷災害に悩むマレーシアのマラッカ海峡沿岸地域を対象に、世界最高峰の雷観測網を構築し、発雷予測などの実現によって防災に貢献することを目指すものです。
令和3年9月に詳細計画策定調査を実施し、国際協力機構(JICA)とマレーシア高等教育省の間で技術協力プロジェクトの実施合意と位置付けられる討議議事録、近畿大学とマレーシアマラッカ技術大学とテナガ・ナショナル大学の間で共同研究に関わる合意文書の取り交わしを経て、令和5年度から5年間のプロジェクト実施が正式に決定しました。
(電気電子通信工学 森本 健志)
エネルギー物質学科 中澤直高 講師が創発的研究支援事業(独立行政法人 科学技術振興機構(JST))に採択
中澤直高 講師(エネルギー物質学科)の研究課題が科学技術振興機構(JST)の創発的研究支援事業に採択されました。本事業は、既存の枠組みにとらわれない自由で挑戦的・融合的な研究を原則7年間(最長10年、途中ステージゲート審査を含む)という長期間に渡って支援するものです。中澤 講師が所属するエネルギー物質学科は、分野の垣根をこえた教育・研究の共創によって将来のエネルギー人材を育成することを目的としており、エネルギー物質学科の特徴を踏まえた融合的な研究の推進が期待されます。
中澤講師の採択課題:「ニューロンがもつ力学刺激の検知機構に基づく生体力学素子の創出」
研究期間:2023年4月〜2026年3月(フェーズ1)、2026年4月〜2030年3月(フェーズ2)(予定)
(エネルギー物質学科 須藤 篤)