生命活動の根幹、タンパク質の機能解析から
種の進化に伴うタンパク質の機能 変遷の痕跡を追う。
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タンパク質の機能を解明する意義
一般にタンパク質というと栄養素の一つとして捉えられがちですが、そもそも生命の設計図と言える遺伝子に収められているのが多種多様なタンパク質の設計図であると考えると、タンパク質が生命の根幹を担う非常に重要な物質であることがわかると思います。私たちは無数にある中の一部のタンパク質の機能を研究しているわけですが、その一部がどのように働いているかを解明できれば、将来的に機能を人工的に調整したり、その形を利用して新しい機能を創生したりすることも可能となり、病気を治すことや生命活動を助けるなどの成果も期待できます。
睡眠物質にかかわる酵素の機能解析から
学生時代、研究者としてキャリアをスタートさせた時から、テーマの一つとしてヒトや哺乳類の脳内で睡眠誘発物質を合成する酵素、タンパク質の機能を解明するという研究を手がけて来ました。そしてその発現メカニズムを明らかにできたことから、またこの研究を新たに違う視点で捉え、今度は哺乳類以前の先祖遺伝子に戻った時に、この酵素がどのように進化してきたのかということを遡って調べ始めました。すると、さらに面白いことが見えて来たのです。
突然の酵素機能発現の痕跡を発見
研究を続けていく中で、ターゲットのタンパク質は睡眠誘発の機能を両生類の時に発現することがわかって来ました。では遡って魚類の中では酵素活性を持たない、つまり酵素になる前はどのように働いていたのか。そこでメダカの中のタンパク質を取り出して、機能解析やどのような化合物と結合するかなどを調べていくと、このプロスタグランジンは繁殖時に脳内で分泌されたり、生殖器で生成されるものと結合することがわかって来た。魚類では何らかの生殖行動に関わっているのかなということです。そこで現在は実際のメダカを解剖して、どこで発現しているか、生殖行動の前後で発現量がどう変わるのかなどを観ているところです。
等しくどんな研究も役に立つ
他にも今まで働きがわからず見過ごされてきたタンパク質は無数にあって、誰かがスポットライト -最先端研究を当てて一つ機能がわかれば、それが新しいタンパク質を設計する情報にもなり、機能を改良することも可能になって来ます。
私は等しくどんな研究も役に立つ——良い研究も悪い研究もないと思います。研究者にとって一人一人が面白いと思える興味があるので、その中で楽しいことを見つける能力の方が、私は重要だと考えます。やってみたいこと、できることを増やしていくと、また違う “ものの見え方”が出てくるので、それを感じてまた次の楽しいことを見つけ、次につなげて行く。研究であれ何であれ、「楽しむためにどうしたらいいのか」ということを考えるのが、私はすごく重要だと思っています。
- 島本 茂
- 生命科学科 講師
所属: 学科 / 生命科学科 専攻 / 研究室:分子機能制御研究室
略歴 | 2010年4月 - 2011年3月 |
大阪大学大学院 薬学研究科 日本学術振興会特別研究員(PD) |
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2011年4月 - 2014年3月 |
近畿大学 理工学部生命科学科 助教 | |
2015年4月 - 現在 |
近畿大学 理工学部生命科学科 講師 |
近畿大学理工学部 社会環境工学科 教授
景観工学研究室 岡田 昌彰
近畿大学理工学部 理学科 准教授
特殊関数研究室 鈴木 貴雄
近畿大学理工学部 理学科 教授
物理化学研究室 神山 匡
近畿大学理工学部 生命科学科 講師
分子機能制御研究室 島本 茂
近畿大学理工学部 電気電子工学科 教授 吉田 実
近畿大学理工学部 応用化学科 教授 古南 博
近畿大学理工学部 理学科 教授 堂寺 知成
近畿大学理工学部 理学科 教授 佐賀 佳央
近畿大学理工学部 応用化学科 准教授 今井 喜胤
近畿大学理工学部 理学科 准教授 矢野 陽子
近畿大学理工学部 機械工学科 教授 西籔 和明
近畿大学理工学部 社会環境工学科 教授 東山 浩士
近畿大学理工学部 電気電子工学科 講師 菅原 賢悟
近畿大学理工学部 理学科 講師 鄭 仁大
近畿大学理工学部 社会環境工学科 准教授 河井 克之
近畿大学理工学部 生命科学科 准教授 早坂 晴子
近畿大学理工学部 応用化学科 准教授 松尾 司
バイオコークス研究所 所長/教授 井田 民男
近畿大学理工学部 理学科 教授
一般相対論・宇宙論研究室 石橋 明浩