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次世代再生可能エネルギー「バイオコークス」夢の燃料で争いのない世界を!
- 井田 民男
- バイオコークス研究所 所長/教授
- 教員の所属・職位については、記事公開時のものです。現在の所属・職位とは異なることがあります。ご了承ください
あらゆる植物が持つポテンシャル:バイオマスからバイオコークスへ
植物(バイオマス)の魅力は、太陽エネルギーにより空気中の二酸化炭素から幹枝などを作る“光合成”にあります。しかし、そこには課題があって、この幹枝などに固定化された炭素が低級であるということでした。一方で、植物の光合成によって生み出される組織は、セルロース、ヘミセルロース、リグニンなど、高分子かつ重合度の比較的高い組織構造を有しています。けれどもこの低炭素と高度な組織構造とを有機的に結び付けることは、残念ながら既存の概念にはなかったようです。そこで、私たちが導き出したその答えが「バイオコークス」なのです。木はもちろんのことジャガイモの皮、ミカンの皮や茶滓など台所から出る植物性廃棄物のゴミからも造れる再生可能なバイオ固形燃料を指します。これらのバイオコークスは、極めて高いポテンシャルを持っています。
掌のバイオコークス
バイオコークス技術とは?
植物(バイオマス)の魅力は、太陽エネルギーにより空気中の二酸化炭素から幹枝などを作る“光合成”にあります。しかし、そこには課題があって、この幹枝などに固定化された炭素が低級であるということでした。一方で、植物の光合成によって生み出される組織は、セルロース、ヘミセルロース、リグニンなど、高分子かつ重合度の比較的高い組織構造を有しています。けれどもこの低炭素と高度な組織構造とを有機的に結び付けることは、残念ながら既存の概念にはなかったようです。そこで、私たちが導き出したその答えが「バイオコークス」なのです。木はもちろんのことジャガイモの皮、ミカンの皮や茶滓など台所から出る植物性廃棄物のゴミからも造れる再生可能なバイオ固形燃料を指します。これらのバイオコークスは、極めて高いポテンシャルを持っています。
最新バイオコークス連続製造装置(協力:(株)ナニワ炉機研究所)
バイオコークスで実現する新しい高温溶解
では、産業分野における実用性はどうでしょう?例えば、鉄鋼分野での主要燃料である石炭コークスは、次のような3つの役割が必要とされています。
- 鉄を溶解するための約1500℃の溶解熱量
- 1500℃付近での加炭性能
- 高炉での900℃付近での銑鉄を還元するための還元性能
バイオコークスの特性と必要とされる性能に当てはめてみれば、溶解炉と直接高温ガス化溶解炉での実証試験成果から、まさに当該特性と実溶融炉のタイプのその組み合わせが、バラエティーに富んでいることを示唆しています。この組み合わせは、さらにバイオコークス技術を発展させる原動力となるでしょう。
1500℃の高温環境下でのバイオコークスの燃焼
バイオコークスで広がる新しい可能性
バイオコークスは、脱化石資源、特に石炭コークスの代替燃料として開発、実用化を進めてきましたが、3・11東日本大震災後、その指針に新たに長期保存性、安定性等のキーワードを加える必要が出てきました。バイオコークスは、その高密度な特性から「がれき」や「放射性汚染物質」の容積を減少させる技術に応用でき、100 年単位での長期保存が望めます。特に、直接高温ガス化溶融炉での石炭コークス代替の成果は、「がれき」をバイオコークス化し、「がれき」を直接溶融炉で減容化することにより、「がれき」処理に化石資源を極力消費せず、「がれき」のエネルギー化が図れ、エネルギーと環境問題を同時に解決できる可能性を持っています。さらに、「放射性汚染物資」の除染作業で生じるバイオマスに関しても、減容化と長期安定保管が可能な技術として応用できる多大な可能性を持っているのです。
福島県川俣町でのバイオコークス実証事業
若者へのメッセージ:We have a dream !
世界での争いの多くは、エネルギー資源の争奪から始まっています。エネルギー資源は、武器になる。悲しいけれど、それが事実です。化石資源から再生可能なエネルギーへの転換は、各国共通のバイオ資源の有効活用に係っていると言っても過言ではありません。私たちのバイオコークス研究所は、実学を尊び、その難題に真正面から向き合います。そして、環境問題とエネルギー問題を同時に解決しながら、エネルギーの自立ができる世界を目指し、争いのない、いつまでも笑顔で暮らせる社会の在り方を究めることを使命と考えています。
用語解説 | |
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バイオコークスとは | 近畿大の研究グループが鉄を溶解する大型鋳造炉で、石炭コークスと混ぜて燃焼させる実験をした結果、炉内温度は石炭だけより高温となり、不純物の混入も起きないことを確かめた新しいバイオ固形燃料。原料の100%を活用できる高いリサイクル性と、CO2の排出量削減につながり、ASEAN諸国とのWin-Winの関係を築ける可能性のある新エネルギー技術。 |
- 井田 民男
- バイオコークス研究所 所長/教授
専攻: メカニックス系工学専攻
研究室: マイクロ・エネルギー工学研究室
バイオコークスプロジェクト サイト
業績 | 2007-08年度 | イノベーション実用化開発費助成金(NEDO マッチングファンド)「鋳造コークス代替となる高硬度固形バイオ燃料の量産機開発と実証」 |
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2008年度 | 経済産業省・北海道経済産業局 ナショナルプロジェクト 2008年度 低炭素社会に向けた技術シーズ発掘・社会システム実証モデル事業(経済産業省委託事業) 「北海道発・草本資源を利活用した次世代ゼロ・エミ燃料による低炭素社会への実証モデル」 |
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2010年度 | 経済産業省・北海道経済産業局 ナショナルプロジェクト 2010年度 地域イノベーション創出研究開発事業(経済産業省・北海道経済産業局委託事業) 「道内未利用バイオによる高効率ソフト・バイオコークスの研究開発」 |
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2011年度 | バイオマスエネルギー技術研究開発/戦略的次世代バイオマスエネルギー利用技術開発事業 (次世代技術開発)」(NEDO) 「先進的トレファクション技術による高密度・高炭化率固形燃料の研究開発」 |
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2014年度 | 科学技術振興機構・2014年度産学共同実用化開発事業・「海外未利用バイオマス資源活用バイオコークス」 | |
略歴 | 1987年 | 豊橋技術科学大学大学院工学研究科修士課程エネルギー工学専攻修了 |
1995年 | 豊橋技術科学大学 博士(工学)取得 | |
2005年 | 米国ケンタッキー州ケンタッキー大学工学部機械工学科にて在外研究 | |
2014年 | 近畿大学理工学部 教授昇格 | |
2014年 | バイオコークス研究所 所長就任 | |
受賞歴 | 2011年度 | 新エネ大賞 資源エネルギー庁長官賞 受賞 |
2012年度 | 地球温暖化防止活動環境大臣賞 受賞 |
近畿大学理工学部 社会環境工学科 教授
景観工学研究室 岡田 昌彰
近畿大学理工学部 理学科 准教授
特殊関数研究室 鈴木 貴雄
近畿大学理工学部 理学科 教授
物理化学研究室 神山 匡
近畿大学理工学部 生命科学科 講師
分子機能制御研究室 島本 茂
近畿大学理工学部 電気電子工学科 教授 吉田 実
近畿大学理工学部 応用化学科 教授 古南 博
近畿大学理工学部 理学科 教授 堂寺 知成
近畿大学理工学部 理学科 教授 佐賀 佳央
近畿大学理工学部 応用化学科 准教授 今井 喜胤
近畿大学理工学部 理学科 准教授 矢野 陽子
近畿大学理工学部 機械工学科 教授 西籔 和明
近畿大学理工学部 社会環境工学科 教授 東山 浩士
近畿大学理工学部 電気電子工学科 講師 菅原 賢悟
近畿大学理工学部 理学科 講師 鄭 仁大
近畿大学理工学部 社会環境工学科 准教授 河井 克之
近畿大学理工学部 生命科学科 准教授 早坂 晴子
近畿大学理工学部 応用化学科 准教授 松尾 司
バイオコークス研究所 所長/教授 井田 民男
近畿大学理工学部 理学科 教授
一般相対論・宇宙論研究室 石橋 明浩