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岡本 健 先生
「ドラスティックな現代社会で前向きに生きていこう。」岡本健先生が学生に思い描く未来とは
社会・マスメディア系専攻 准教授
岡本 健 先生

2019年のオープンキャンパスで「ゾンビだらけのサイエンスパニック」を監修し、“ゾンビ学”で名を馳せる岡本健先生。最近ではVtuberとしても活躍されており、現代社会で新しいことへの挑戦を続けています。研究の面白さ、そして総合社会学部の学生に伝えたい想いに迫ります。

「面白かった」とか「気持ちよかった」とか「気持ち悪い」で終わらないで欲しい。
自分が知らない仕掛けに気づく楽しさ

現在最も力を入れている研究は何ですか?

特にボードゲームなどを含んだアナログゲームに関心を持っています。
コロナ禍でアナログゲームの売れ行きが良いんです。おうち時間が長いから、家族でプレイするものが多くて。おもちゃ屋さんに行ってみたら、アナログゲームのコーナーが増えているんですよ。アナログゲームの歴史であったり、作り手はどんな人たちなのか、どのように遊ばれているのか、といったことに関心があって研究を進めています。

いつからこの研究に興味を持ち始めたのですか?

アナログゲームに触れたのは2008~2009年くらい。でも、その時僕は大学院生で、アニメ聖地巡礼の研究をしていたので、面白いなと思いつつ、研究対象としては考えていなかったんです。あとはボードゲームをモチーフにした『放課後さいころ倶楽部』っていうマンガがあるのですが、それを読んで、なんか「漫画のテーマとしても取り上げられるようになってきたんだな」みたいなことを感じていました。本当に真剣にやろうと思い始めたのは割と最近です。2019年の4月から近畿大学に勤めて、長瀬駅から歩いていたら、ボードゲームカフェがあったんですよね。当時は1306(いちさんまるろく)っていう名前の店でした。大学の近くの商店街にアナログゲームカフェが出来たんだって思って、そのお店に行ってみたんです。そして、店長の話を聞いていたら、店長は近大の卒業生だって話で、ゲームが具体的な場とも繋がれるから、可能性あるなって思い始めたんですよね。自分が研究するって意味でもできそうな感じ。だから本式的にやろうと思い始めたのはそのくらいかな。 少し前までは、共同通信さんでボードゲームの連載を書かせていただけたりして、現在は少しずつ研究成果を出し始められている段階です。

研究することの面白さとは何でしょうか。

僕自身が皆に伝えたいのは、世の中から、自分なりに面白いものを引っ張り出す方法を知ってほしい(ということな)んですよね。人間、街を歩いていても、何も感じずに歩くことは可能ですし、何を見ても無感動・無関心になれますよね。でも、色んなものに興味関心を持って、もう一歩知識を深めるだけで、この世の中はとても面白いものが転がっているんですよ。何か作品を観たり、何かを体験したときに、「面白かった」とか「気持ちよかった」とか「気持ち悪い」で終わらないで欲しいんです。文化にも社会にも仕組みや仕掛けがあったりする。そういうことに気づいて楽しむと、より深く楽しめる、ということです。僕は、学生にその視点を身に着けて欲しいとすごく思っているし、自分自身でも研究していて、自分が知らなかった見方とか自分が知らなかった仕組み仕掛けみたいなものがわかると「なるほどね」「すごいな」みたいな風に思うし、楽しいですよね。

興味のない世界にも深く調べることで面白さがある。学生時代に変化した世の中の見方

学生時代から「仕組みを知りたい」と思うような考え方だったのでしょうか?

優秀な学生ではないし、興味関心が広かったかというとそうでもなかった気がしますね。でも、学部の三年くらいからは、レポートの書き方が分かってきて、授業も面白くなったんです。他の同級生は寝ているような授業でも「おもろいな」って思い始めて。どんなことも深く調べていったら面白いことがある、というのを大学の授業で教えてもらいました。僕は文学部で、言語学とかも学んだんですよ。言語学の中でも音声学が結構面白くて。音声学は、人間がどういう口の形から言語を発音しているのかを研究したりする学問分野です。その中で、ある国の言葉は吸う音を言葉の中に入れている、だから息を吸う音が意味を持つっていう話を聞いたときにすごい感心したんですよ。別に普通のことしか言われてないんですけど、「そういえばそうやな」と。そういった発見が三年くらいからすごい多くて、「ちょっとしたことでも、調べていけば面白いことや発見がいっぱいある」と思い始めました。自分が全然興味ないって思っていても意外とじっくり話を聞いたり、本を読んだりしたら、違う世界が見えるんだって。それから少しずつ世の中の見方が変わってきたなという気がします。

挑戦できる環境と、前向きで素直な学生と描く“これから”

近畿大学で勤務すると決めた理由はありますか?

近畿大学には可能性を感じるというか、面白くなりそうって感じたのが大きかったですね。

今もその考えにはお変わりはないですか?

変わりないですよ。すごく自由で、学生が良いっていうのは本当に感じます。これだけの学生がいたら当然色んな方がいますけど、全体的な傾向としては、すごく前向きで、素直なんですよ。素直なことっていいことだと思っていて、「まずちゃんとはじめに聞こうとする」ことは成長に欠かせないことなんです。
実は僕、今まで他の大学でプロジェクトに公募をかけてもそんなに多くの学生は手を挙げなかったんですよ。一部の熱心な学生だけ。でも、近畿大学には積極的にやろうって言ってくれる学生がたくさんいます。だからこそ、僕も色んなプロジェクトができるんですよね。以前までだと、企業から依頼を受けても、何個か諦めたこともあるんですけど、近大に来てからはそういうことがないですね。だから本当に助けられているし、良かったなって思うところの一つです。
もう一つは、大学としても教員が新しいことに挑戦することをすごく応援してくれるので、研究も教育も楽しみながらやらせてもらえています。

10周年を迎えて総合社会学部の学生へ何かメッセージをお願いします。

現代は社会がドラスティックに変わってしまっている状況ですよね。元に戻るのか分からないですけど、とにかく未来が安定していない状況です。これはコロナに限った話ではなく、現代社会の一つの特徴かもしれません。この後どうなるのか予想がつきにくいところです。総合社会学部で勉強した・研究したみなさんはこういう変化の時代の中で色んな知識や情報や経験を総動員して、なんとか「前向きな社会を作っていこうぜ」って思える人、それに向かって動ける人、そういう活動を応援する人、そんな風になってくれていると嬉しいです。そうして、一人一人が面白いことや人に優しいことをやっていくと社会全体が気持ち良く暮らしやすい社会に、前向きで面白い社会になると思うんですよ。だから、社会で活躍する皆さんはそういう感覚を忘れずに頑張って欲しいなと思うし、一緒に頑張りましょう。

岡本先生個人の今後の目標を教えてください。

遠隔授業を充実させたいです。コロナ禍でも、コロナ禍じゃなくても、遠隔で授業を面白く受けるためにはどうすればいいのか、ということにトライしています。昨年度にVRを使って教室のCGの中で授業することができるシステムを作ったんです。先日は、卒論発表会をYouTubeLiveで実施したりもしました。楽しくて面白い遠隔授業を作っていきたいですね。直近の目標としてはYouTubeチャンネル登録者数1000人です(笑)

岡本先生、ありがとうございました!

執筆:永野 瑠衣(社会・マスメディア系専攻 10期生)
文中の学年等は2021年度の取材当時のもの