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Review04
図書館司書コース修了
シンガーソングライター
つじあやのさん
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はてしない物語
(著)ミヒャエル・エンデ
(訳)上田 真而子、佐藤 真理子
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この本と、どんな風に出会いましたか?
図書館司書の資格を取得した後、平日だけでも司書の仕事ができないかと考え、学校図書館の短時間勤務に応募しました。面接の際、課題として「学校図書館での展示」が出されました。これを機に、今まで読んでいなかった児童文学の作品を読んでみようと思い、図書館で数冊を借りて読みました。その中にはミヒャエル・エンデの「モモ」も含まれており、とても面白かったのでエンデの「はてしない物語」も読んでみました。
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この本の最大の魅力は?
この本は映画『ネバーエンディング・ストーリー』の原作であり、読む前に「映画とは全然違う」と聞いていましたが、本当に違っていました。映画とは別物で、単なる楽しい子供の冒険の話ではありませんでした。長い作品なので途中で挫折しそうになりましたが、読み進めるうちに主人公の少年バスチアンの心の光と闇がますます明確になり、苦しいような心持ちになっていきました。長い旅の果てに辿り着いたのは、意外にも”家族との絆”でした。まさかこういうテーマだったとは思わなくて衝撃でした。
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特に心を揺さぶられたシーンは?
物語の終盤、「アイゥオーラおばさま」の章で、バスチアンが彼女の家から旅立つシーンがあります。花や実を纏った母のようなおばさまの愛情に癒され、バスチアンは現実世界に戻るための「生命の水」への旅立ちの時を迎えます。旅立ちの朝、瑞々しく美しかったおばさまは、彼に無償の愛情を注ぐ役目を終え、葉も花も落ち、黒々とした枯れ木のようになって動かなくなっていました。このシーンはまさに母性だ、と子育て真っ最中の自分と重なり、涙が止まりませんでした。
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一番好きな「台詞」や「一節」は?
“雪の上のその絵を眺めるうちに、バスチアンの中に、この見知らぬ男への思慕が目覚めた”
「絵の採掘坑」にある一節です。本の中の世界「ファンタージエン」での冒険を続けるうちに、バスチアンは元の現実世界のことを忘れていきます。元の世界に戻るための鍵を握る「一枚の絵」を探していたバスチアンがやっと見つけたのは、寂しそうな顔をしている自分のお父さんの絵でした。バスチアンの中に「この寂しそうな人をなんとか助けてあげたい」という感情が芽生えます。「わ、お父さんがここで登場!」と胸が熱くなりました。忘れていたはずの父への思いが蘇る、忘れられない一節です。
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この本を読む前と読んだ後で、
あなた自身の価値観や人生は
どのように変わりましたか?こんなにも多くの言葉と時間をかけて「愛」を表現するなんて凄い!と思いました。自分はそれができているだろうか?歌を作って歌うことで、果たして自分はその表現をできているのだろうかと、自問せずにはいられませんでした。そして、なんとか自分も人の心に寄り添う作品を作りたいと強く思いました。頑張ります。
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どんな人におすすめですか?
大人にこそ読んでほしい一冊です。本当に大切なものが何かを教えてくれると思います。今生きているありのままの自分を認め、好きでいること。そして、自分を大切に思ってくれる人と素直に心を通わせ、話し、触れ合うこと。少年バスチアンは「はてしない物語」という冒険のおかげで、仲違いしていたお父さんと心を通わせることができました。大人になった私たちには、あとどのくらいの時間が残されているでしょうか?
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この本への愛を語ってください。
どうしてもっと早く読まなかったのかと悔しい気持ちです。でも、子供の頃に読んでいたら、今と同じ感想にはならなかったのではないかとも思います。ファンタジーの世界でヒーローになって輝くシーンが半分、あとの半分は葛藤が少しずつ増えてくるので、苦い気持ちにもなったと思うし、最後まで読み通せたかどうかも分かりません。文庫版は上下巻になっており、下巻の最後の二、三章にどどーっと感動が押し寄せるので、皆さんぜひ最後まで読んでください!
Review04
はてしない物語
(著)ミヒャエル・エンデ
(訳)上田 真而子、佐藤 真理子
1982年6月7日初版
岩波書店
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