学部長挨拶

 私たちは太古から言葉を使って、文明を開拓し、思想を作りだし、社会を形成してきました。私たちにとって言葉は、強く生きてゆくために欠くことのできないものなのです。言葉はやがて文学となって私たちの生きる世界に存在しています。
 いっぽうで、言葉にできない感情を抱くのも人間です。その想いは芸術を生み出す原動力となり、美術や音楽、舞踊や芝居などの身体表現、さまざまな方法で、人間は言語以外の未知の感情や答えのない問いに対して挑戦してきたのです。
 人類が長い歴史の中で蓄積してきた文学と芸術。そしてそれらによって生まれてきた文化について学び、これからの時代に文学と芸術、文化の担い手になろうと思う人、それらを社会に発信しようと考える人のために文芸学部は存在しているのです。

 近畿大学文芸学部は、一言で言えば文学・芸術・歴史・言語・社会が学べる学部です。他大学の「文学部」が扱うジャンルに「芸術」が加わっている点がユニークです。また、学部内で学べる領域が広いことも特徴です。哲学・倫理学・感性学のような思想。文化・歴史・言語・文学・芸術に関する知識と批判的視点。造形芸術・舞台芸術・文学作品の創造。さらには、それらと社会・文化とを結びつけることが含まれます。
 文芸学部には日本文学・英語英米文学から成る「文学科」、舞台芸術・造形芸術から成る「芸術学科」、日本史系・世界史系・現代文化・倫理系・文化資源学系の4つの領域の「文化・歴史学科」、感性学系・デザイン系・プロデュース系を持つ「文化デザイン学科」の4学科から構成されています。各学科は、それぞれが名称に挙げた専門分野を学ぶことができるようにカリキュラムが組まれています。

 文芸学部では、自由闊達な発想や議論とユニークな個性の育成を大切にしています。そうして育った卒業生は、官公庁、教育機関、企業に勤務するほか、起業したり、作家、デザイナー、芸術家になったりもしています。卒業後の進路に多様性があるのも文芸学部の特色です。
 さらに、文化デザイン学科が文芸学部の活動を社会貢献に結び付ける役割を果たし始めました。文芸学部で醸成された心の豊かさにかかわる知の世界を、これからもっと社会に発信していくことになるでしょう。

鈴木 拓也
TAKUYA SUZUKI
教授/学部長