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スクーリングの刺激

静かなリビングに響くのは、時計の秒針の音だけだった。通信教育部で学ぶ54歳の会社員、誠(仮名)は、パソコンの画面に向かってため息をついた。彼は再び学びの場に戻ることを決意し、近大通信の4年制法学部に入学した。しかし、テキストでの自学自習やオンラインの授業は孤独感で学習に対する不安が増すばかりだった。友人を作る機会もなく、次第にモチベーションが下がっていた。

スクーリングの刺激

誠はもともと、地元の高校を18歳で卒業後、某企業に就職して会社員となり、大阪府下の営業所で働き始めた。20歳をすぎるころには経済的に自立し、夜間大学に進みたいと考えていたが、変形勤務のため実現は難しかった。20 代半ばで東京の本社に異動し、その後大阪市内にある大阪支社に異動してデスクワークに従事。営業所を離れてから、そのほとんどを大阪支社で人事部門の仕事を担当し続けた。 そして、ここ数年は再び営業所において新たなポジションでの任務に就いている。

久しぶりの来校 通信教育は孤独の学問

その日、誠はスクーリングを受講するために、久しぶりにキャンパスに足を運んだ。教室には、同じように授業を受ける学生たちが集まっていた。誠は講義を受けながら周りの学生たちの顔を見て、自分が孤独ではないことを感じていた。

「思っていたよりもたくさんの人が同じ授業を受けるんだな」と、誠が内心でつぶやきつつふと周りを見渡すと、彼の隣に座った女性がにっこりと笑いかけてくれた。その笑顔が、誠に少しの勇気を与えた。

ただ、実際に入学してみると、仕事との両立が大変だと実感する毎日だった。予定を立てることが難しく、科目終末試験も急きょ所用で受験できなくなることもあった。働いていれば仕方のないことだが、両立は肉体的にも精神的にも厳しく、眠気や日頃の疲れに悩まされることが多かった。そんなわけで、現在3年生だが、スクーリングに行けたのは、法哲学の一度だけだった。あのとき教室で言葉を交わした数名の学生たちは、今どうしているのだろうかと、誠は思うことしかできなかった。

交流会は志を同じくする仲間との出会いの場

「皆さん、授業お疲れ様でした!」明るい声が教室に響いた。教授が、参加者たちに笑顔を向けた。授業の後、学生交流会が始まった。会場は大学内のDNSカフェ。ここは、学生たちの 憩いの場として知られており、今日は特別に貸し切られていた。テーブルには、軽食が並べられ、和やかな雰囲気が漂っていた。
誠が周りを見渡すと、自分と同じように不安そうな顔をした同世代の学生たちが集まっていた。中には、誠よりも少し若い 40代の男性、山田もいた。少しすると、事務局職員の方が交流会についての説明を始めた。

「今日の交流会は、法学部、短大、司書、司書教諭といったコースごとに分かれて交流することになっています。まずは各自自己紹介をお願いします」

誠は自己紹介を始める前に、
一息ついてから話し始めた。

「通信の学生は、孤独です。」

職場でも、私はポジション的に孤独な立場です。そんなわけで、学びの場はプライベートであるし、 できれば志同じくする仲間と交流したいと思うのです。それが、今回の交流会参加を決めた理由です。

共感

誠のグループは法学部の学生たちだった。自己紹介が始まり、それぞれが自分の背景や目指していることを話し始めた。
「私は、息子が高校に入ったのをきっかけに、自分も再び学びたいと思い、通信教育部に入学しました。」と、最初に話したのは久美子だった。

山田が話し始めると、誠はうなずきながら耳を傾けた。
「私は、会社員として働きながら、法学部での学びを通じてキャリアアップを目指しています。 仕事と家庭の両立は大変ですが、ここで学ぶことが自分自身の成長につながると信じています。」山田の言葉に、他の参加者たちも共感の声を上げた。

誠は、仕事の合間に勉強するために、通勤電車の中でテキストを読んでいることを話した。そして、彼がなぜ入学したのかについて語り始めた。

「就職した当初の数年間は夜間大学への進学を夢見ていました。しかし、働くうちに、充実する仕事の中で夢のことも忘れかけたり思い出したりの年月が繰り返され、奮起には随分と時間を要しました。いつしか、定年後に大学に入学して、改めて学びなおそうと考えるようになっていました。しかし、管理職経験のある先輩が、定年後では遅く、学びたいと思った時が始め時だと諭してくださいました。そこで、近畿大学の門を叩いたのが2022年5月のことです。 通信教育部学生センター様では、4月に遡って入学ができること、強く入学の検討をご勧奨いただいたのがご縁です。」

誠はさらに続けた。「法学は高校生の時から実はどこかで進みたいと考えていた分野です。その後、仕事で法務に関わったことがきっかけになりました。また、興味・関心の高い科目があることも後押しになりました。一度スイッチが入ってしまった後は、事は早く進みました。と、こんな感じです。」

山田は深くうなずき、「それは素晴らしい決断ですね」と感心した様子で言った。

今、必要だったのは、出会いと共感。

交流会が進むにつれ、参加者たちは次第に打ち解け、笑顔が増えていった。軽食をつまみながら、お茶を飲み、趣味や家族の話で盛り上がった。誠は山田と久美子と、今度一緒に勉強会を開く約束をした。

「ここに来て、本当に良かった。」誠は心からそう思った。孤独だった学びの時間が、仲間との交流で色鮮やかに変わり始めていた。

ある学生が、自分の法律の勉強がきっかけで地域で開催される法律セミナーのボランティア活動に参加するようになった話をし、他の学生たちもそれぞれの経験を語り合った。

epilogue

交流会が終わる頃、参加者たちはお互いの連絡先を交換し、次のスクーリングで再会する約束をした。誠の心には、新しい友人とともに学ぶ楽しみと、再び高まった学習へのモチベーションが芽生え、「学びは一人でするものではない、仲間とともに成長していくものだ。」 と思えるようになった。
この日の新しい出会いやそれぞれの経験談はどれも新鮮で、共に過ごす時間は貴重なものだった。

誠はこの経験と言葉を胸に刻み、

今後の課題に取り組む決意を新たにした。

今回のハイクラススポット

September 2024
no.07

CNN Café

コミュニケーションを誘発する
次世代型食堂

DNS POWER CAFE

大学の学食に、健康的な身体作りができる機能とコミュニケーションを誘発し、エンターテイメント性をも持たせる事で、” 心と身体両方の健康をサポートする場所に "をコンセプトとした新食堂。その日の体調に合わせて食事メニューをカスタマイズしたり、キャッシュレスでの事前決済で並んで待つことなく食事ができるなど、“次世代型食堂“として学生の利便性も最大限に考慮した施設です。

※実際の施設運営とは異なる場合があります。現在の施設運営については以下「詳細はこちら」をご確認ください。

詳細はこちら
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