近畿大学奈良病院の患者用の食事を考案

総合大学の強みを活かし医食農連携で慢性腎臓病の治療を目指す。

臨床栄養学研究室 ×近畿大学奈良病院

慢性腎臓病患者数は、現在約1300万人と推定されています。その背景には肥満や高脂血症、糖尿病があり、今後も増加することが予想されます。慢性腎臓病は食生活が大きく関係している病気です。臨床栄養学研究室では、慢性腎臓病の治療につながる食事療法メニューを開発し、その効果を臨床で実証する近畿大学奈良病院との「医食農連携プロジェクト」を推進しています。

慢性腎臓病の要因の一つはリンの過剰摂取です。リンはほとんどの食材に含まれる成分ですが、腎機能が低下した慢性腎臓病患者は健常者のように腎臓からリンを排出できず体内に溜め込んでしまいます。そのためリンの少ない食事の提供が必要になりますが、リンはタンパク質性の食材に多く含まれているため、必須栄養素であるタンパク質の減少につながらない工夫が求められます。そのため、リンの吸収が動物性食品にくらべて遅い植物性食品を中心としたメニューを開発しています。慢性疾患の場合、病院内だけではなく自宅での継続が不可欠です。そこで奈良先端科学技術大学院大学の技術協力を得て、メニュー情報を情報機器端末から取り出し、自宅で好みの献立を選択、再現できるプログラムも開発中です。

慢性腎臓病患者はカリウムの摂取も制限しなければならず、とくに含有量が多い生野菜は控える必要があります。最近では低カリウム野菜も販売されていますが非常に高価です。そこで、農学部の植物・人間関係学研究室が企業と共同で開発した、ポリエステル培地による安価な高機能野菜の栽培を進め、メニューに取り入れる研究も行っています。植物・人間関係学研究室が高機能野菜を開発し、その食材を臨床栄養学研究室が最適な方法で調理。さらに近畿大学奈良病院が臨床に導入して効果を検証するというトライアングルの研究は、総合大学である強みを生かした取り組みといえます。この研究を進めることによって、最終的には近大発の高機能野菜としてブランド化し、市場に出すことを目指しています。