ユーグレナでの
バイオジェット燃料開発
遺伝子組換え技術により環境にやさしいジェット燃料をつくり出す。
植物分子生理学研究室×株式会社MeDream
植物分子生理学研究室では、ユーグレナ(ミドリムシ)の研究開発・生産事業を展開する株式会社MeDreamと連携し、遺伝子組換え技術によってバイオジェット燃料を高生産するユーグレナを開発する研究を進めています。
実験風景
化石燃料の代替としてバイオ燃料が注目され始めた当初はトウモロコシやサトウキビを原料としたため、食料との競合によって食料価格を引き上げるといった問題が生じました。そこで次世代のバイオ燃料として、農地利用でも競合しない微細藻類の利用が注目されるようになりました。微細藻類の一種であるユーグレナは、鞭毛運動をする動物的性質と葉緑体を持ち光合成を行う植物的性質を併せ持つユニークな生物です。ユーグレナは光合成によってパラミロンという糖を細胞内に溜め込みますが、嫌気条件下に置くと貯蔵されたパラミロンがワックスエステルという油に変化します。これは酸素がない状態でエネルギーを生産して生き延びるユーグレナの生存戦略であり、ワックスエステルをつくり出すのは他の藻類には見られない特性です。ユーグレナがつくり出すワックスエステルは、炭素数14のミリスチン酸とミリスチルアルコールがつながったもので、これから作られる燃料は低温でも固まりにくい性質を持っているためジェット燃料の規格に適合します。実用化にはコスト面の課題があり、そのためにはユーグレナの能力向上がカギとなります。植物の光合成能力を高めるための遺伝子操作をユーグレナに応用し、ワックスエステルを高生産する「スーパーユーグレナ」の作出に成功すれば、環境にやさしいバイオジェット燃料を安価で市場に送り出すことが可能となり、エネルギーの未来を変えることにつながります。
左: ユーグレナ野生株、右: ハイパーユーグレナ1号(光合成能強化)
<細胞内の脂質を特殊な試薬で染色>
左: 嫌気処理後のユーグレナ野生株、右: 嫌気処理後のハイパーユーグレナ2号(脂質生合成能強化)