院生メッセージ
水産学専攻
クニマスの生態について研究し
種の保全につなげたい
クニマスは秋田県田沢湖にのみ生息していたサケ科魚類でした。1940年ごろ国の事業の一環として強酸性水を田沢湖に流入させたことが原因で絶滅したと考えられていましたが、2010年に山梨県西湖で発見され話題になった魚です。私が携わっている研究はそのクニマスの生態についてです。山梨県水産技術センターと共同でバイオロギングという行動を追跡する手法を用いて、クニマスに装着した電子標識のデータを解析することで、居場所や回遊経路などを調査しています。田沢湖や西湖において行動生態に関する研究例は少なく、生息の実態は予想できません。まずは湖全体をどのように利用しているのかを把握することが現在の研究テーマです。また、餌や産卵場所で競合する可能性があるヒメマスもあわせて行動追跡しています。これら行動追跡の結果から、両種の相互関係について考察し、種の保全に寄与したいと考えています。
応用生命化学専攻(応用)
昆虫のイオンチャネルを研究し
殺虫剤の開発に貢献したい
近畿大学農学部を選んだのは、得意な生物を活かせるという程度の理由でした。それでも実際に学んでみると興味深い授業が多く、研究を通じてもっと成長したいと考え大学院に進学しました。大学院では、細胞の生体膜に組み込まれた膜貫通タンパク質の一種であるイオンチャネルについて研究しています。イオンチャネルの中には受容体があり、その部分に化合物が結合すると、チャネル(経路)が開いて細胞にイオンが出入りするというしくみを持っています。ヒトにおける神経伝達物質と同じようなもので、神経細胞にイオンチャネルが発現し、神経伝達物質と結合することで興奮・抑制といった応答反応を引き起こします。研究では昆虫からイオンチャネルを取り出して、その性質を調べています。最終的には、昆虫のイオンチャネルをターゲットにした新規の殺虫剤開発に結びつくことに貢献できればうれしく思います。
応用生命化学専攻(食品)
潰瘍性大腸炎の治療に役立つ
ビタミンCの効果を検証中
私は公衆栄養学研究室で、ビタミンCによる潰瘍性大腸炎に対する改善効果の研究を行っています。潰瘍性大腸炎は大腸に難治性の炎症を生じる病気であり、患者数が多いと報告されていますが、潰瘍性大腸炎の根本的な治療法は未だに確立されていません。そのなかで、私は抗炎症作用などが報告されていて副作用が少ないビタミンCに着目しました。そして、大学時代に潰瘍性大腸炎モデルラットに対するビタミンCの効果を評価した結果、ビタミンCに潰瘍性大腸炎の改善効果を有することを証明しました。現在、私はビタミンCの改善効果の機序を明らかにするために、大学院に進学し、日々研究に取り組んでいます。実験で結果が得られないことが多々ありますが、それを改善し正確な結果が得られた時に、研究の楽しさを感じます。将来は研究の中で学んだ食事成分や病気に関する知識を活かして病院栄養士として働きたいと考えています。
環境管理学専攻
謎の多い魚、メダカの遺伝的撹乱や
種分化について研究
魚の生態や魚の環境保全に興味を持ち、より研究を深めるため大学院に進学しました。学部と修士課程ではメダカの遺伝的撹乱について研究。観賞魚として身近なヒメダカが、人為的に河川へ放たれたことにより野生のメダカとの交雑が進み、その結果長い歴史をかけて培われた遺伝構造や遺伝的多様性が失われる遺伝的撹乱が引き起こされています。それをどうのように守るのかという研究です。博士課程ではメダカの種分化について研究しています。日本にはキタノメダカとミナミメダカの2種があり、見た目はほぼ変わらないのに遺伝子的な特性は大きく異なります。それでも水槽における飼育下では交雑し子を残しますが、自然環境下での生殖的隔離の有無はまだ検証されていません。メダカの種がどのように形成されるかについては様々な謎がありますので、この研究でその解明に迫りたいと考えています。
バイオサイエンス専攻
自分の研究成果を形にできる
論文発表がモチベーションに
大学での研究生活が、卒論研究で終わってしまうのではなく、もう少し研究を突き詰めて何かを成し遂げたいと考え、大学院に進みました。所属する研究室は、新規の耐病性植物を作出することを通じて世界の食糧不足の問題解決に貢献するという遠大な目標を掲げており、私はその中で植物免疫の誘導機構について研究を行っています。具体的には、シロイヌナズナやタバコなどのモデル植物に、研究対象とした遺伝子を導入したり、あるいは欠損させることで生じる免疫応答の変化を解析することで、遺伝子の機能を明らかにしています。やりがいを感じるのは、私の研究成果が論文としてまとめあげられたときです。私自身が論文の共著者として加わることができたことが、大きなモチベーションになりました。論文発表は研究を形にできることに加え、他大学の研究者・院生との交流のきっかけにもなり、研究意欲を高めることができます。修了までにもう一本の論文を作成できるように、研究成果を出したいと思います。