学科長挨拶
生き物を学び、考え、役立てる
高校生の頃、私は物理が好きでした。物理は「物」がもつさまざまな性質やしくみのことを教えてくれます。工作も好きで、よく紙飛行機を作って飛ばしていました。ある時、蚊をたたきそこねて思いました−「蚊は自分で飛んで、人間を嗅ぎつけ、血を吸い、ささっと逃げる。こんなに小さいのにどうなっているのだろう?」−さらに、当時(1980年代)はバイオテクノロジーに大きな期待が寄せられ、人間には簡単に作ることのできない物質を植物に作らせる研究も始まっていた頃です。テレビで見た、透明なフラスコに入った植物培養細胞が印象的でした。私の興味はすっかり「物」から「生き物」に向いてしまいました。
生き物はとてつもなく長い時間をかけて現在の姿になりました。生きるために新しい性質やしくみを手に入れ、絶え間なく改良してきたのです。そのような生き物から学ぶことはたくさんあります。例えば、植物は「動かない生き物」ですが、その代わり自分を周りに合わせたり、対抗したりするしなやかな工夫を積み重ねてきました。また、微生物は「見えない生き物」で、病気の原因となるものもいますが、他の生き物を助けるはたらきをもつものもいます。
生物工学科では、このような植物や微生物の生き方やしくみを学び、考え、そして役立てようと、学生と教員が一つになって取り組んでいます。理論から実験、生体分子から細胞や個体、組織培養から植物工場、実験室からフィールドまで、さまざまな視点や手法で生き物と向き合うことで、学生の皆さんの成長や社会の発展に貢献できることを願っています。
- 大和 勝幸
- KATSUYUKI YAMATO
- 生物工学科長/生物工学科 教授