
Message VOL.14
工学部 電子情報工学科
半導体光物性研究室
教授
永井 武彦
Takehiko Nagai
太陽光発電は、資源が枯渇せずCO₂も排出しないため、エネルギー自給率の向上や脱炭素社会の実現のほか、災害時の非常用電源としても重要である一方、2030年代後半にピークを迎える太陽光パネルの大量廃棄に備える必要もあります。
そこで、電子情報工学科の永井武彦教授は、電気を創る「太陽電池」、蓄える「全固体電池」、ロスを抑える「パワー半導体」という3つの核心技術を進化・発展させる研究に力を注いでいます。AIの普及で爆発的に増える電力需要への対応と、持続可能な社会の実現の両立に向け、大きな期待が寄せられています。




太陽電池は「電池」という名前が付いていますが、電気を蓄えるわけではなく、光エネルギーを吸収して電子を作り出し、半導体の働きを利用して直接、電力に変換する発電装置です。太陽電池や蓄電池といったエネルギーデバイスは、性質の異なる材料を接合させることで初めて機能を発揮します。異なる物質が交わっている「界⾯」の電⼦の状態を正確に評価し、思い通りに制御する技術こそが、デバイスの発電効率を向上させつつ、高い安定性をもたらすカギを握っています。そこで、界面の電子状態を評価して制御する研究を進めています。
生み出した電気を効率的に蓄えるには、高性能の電池が必要です。スマートフォンやパソコン、電気自動車(EV)などに使われているリチウムイオン電池は私たちの暮らしに欠かせませんが、発火や爆発など安全面の課題があります。一方、全固体電池は液体を使わないため、発火や液漏れのリスクが低い上、温度変化にも強く、同じサイズでより大きな電力を蓄えられるなどのメリットもあり、自動車業界を中心に次世代電池としての期待が高まっています。ただ、全固体電池には界面に発生する抵抗が性能を制限してしまう課題があるため、界面の状態を詳細に解析し、高速の充電や安定した作動など高性能化につなげます。
素材の異なる太陽電池を2枚以上重ねて発電効率と耐久性を大幅に高める「タンデム型」の研究を進めています。広く普及するには、安く製造できる低コスト化も重要な課題です。そこで、太陽電池の約97%を占めるシリコン製の太陽電池に、地球上に豊富に存在する銅と酸素からなる酸化銅の太陽電池を重ねる研究を進め、次世代の太陽光発電技術の確立をめざしています。また、使用済み太陽光パネルのアップサイクルにも役立てることで大量廃棄を避けるほか、山地が多く太陽光発電に適した土地が不足している日本では、山間部を造成して設置したメガソーラー(大規模太陽光発電所)による土砂災害や森林伐採といった環境破壊の解消にもつながります。高効率で安価な太陽電池と全固体電池を開発できれば、太陽光発電システムやEVの発展だけでなく、CO₂排出のおよそ7割を占める化石燃料を用いた火力発電の比率を大幅に低減でき、脱炭素社会の実現に大きく貢献できます。
電化とデジタル化の進展によって、気候変動への対策が世界的に大きく前進する中、主役である太陽エネルギーの効率的な利用に関する学術研究は学内にとどまりません。第⼀線で活躍する研究者の話を直接聞く機会や、学外機関との共同研究による外部施設での本格的な実験など、チャンスは豊富にあります。さらに、得られた研究成果を、国内外の学会で発表する機会を用意しています。実践的な研究スキルを磨いて社会や世界と積極的につながりながら、ゲームチェンジに挑戦していく環境があります。
思い起こせば、私の研究の原点は、幼い頃に虫眼鏡で光を集めて紙を焦がす実験に興味持ったことです。そうした、光が物質に当たったときに何が起こるのかを物理学的に調べる「光と物質の相互作⽤」は、社会を救うテクノロジーにつながっています。⾼効率で安価なエネルギーデバイスの開発は、私たちの未来を豊かで環境に優しい暮らしに変化させる⼒を秘めています。自らのアイデアと技術を駆使して未知の世界を解き明かし、持続可能な社会づくりへの貢献に、共に挑戦していきましょう。
※教員の所属および職位は、2026年度現在のものです。