アルコールについて

アルコールに強い人と弱い人の違いは?

なぜ人によってアルコールに強い、弱い、の違いがあるのでしょうか?
口から入ったアルコールは胃や小腸から吸収され、大部分が肝臓で「アセトアルデヒド」という物質に分解されます。このアセトアルデヒドという物質が顔を赤くしたり、悪酔いや二日酔いの原因となる有害物質です。そしてこの有害物質を分解するのが「アルデヒド脱水素酵素(ALDH)」です。
この酵素にはアセトアルデヒドが低濃度の時に働く「ALDH2」と、高濃度にならないと働かない「ALDH1」の二種類があります。
一般に「お酒に弱い」といわれる人は「ALDH2」の活性が弱いか、欠けています。つまり、悪酔いの原因となるアセトアルデヒドを速やかに分解できないため少量のアルコールでも悪酔いしやすい、「お酒に弱い体質」といわれます。
ちなみに、日本人の約半数は生まれつき「ALDH2」の活性が弱いか欠けているといわれています。
以上のようにお酒に強い、弱いは生まれつきの体質によるものです。「人に勧められて」や「強くなるために」など、自分の許容量を超えた飲酒は避けましょう。

アルコールが体に及ぼす悪影響

「酒は百薬の長」といわれるように、適量の飲酒は血管を拡張させたり血行を早め各臓器の働きを促進させます。しかし、適量を超過すると各臓器の負担が大きくなり、限界に達すると血管破裂・心臓停止・肺水腫・肝炎・吐血・下血など重篤な病気になります。
さらに過度の飲酒が慢性化すると、肝臓障害・胃(食道)潰瘍・胃がん・食道がん・各種脳神経疾患・うつ病など、さまざまな病気が引き起こされます。
アルコール依存症の合併症として約8割の人に何らかの臓器障害が認められるといわれています。その中でも脂肪肝・アルコール性肝炎・肝硬変などの肝臓障害がもっとも多く見られます。

「酔う」とは?

体に入ったアルコールは血液で脳に運ばれ、脳の神経細胞をマヒさせます。いわゆるこれが「酔った」状態です。最初は「爽快期」「ほろ酔い期」から始まりますが、お酒を飲むにつれて次第にアルコールの血中濃度が上がり、「酩酊期」「泥酔期」「昏睡期」へと移行し、最終的には死に至ります。

平均的なお酒の量と酔いの状態

お酒の量 酔いの状態
爽快期 日本酒(~1合)
ビール大(~1本)
ウイスキーシングル(~2杯)
気分が爽やか
皮膚が赤くなる
判断力がやや鈍る
ほろ酔い期 日本酒(1~2合)
ビール大(1~2本)
ウイスキーシングル(2~5杯)
ほろ酔い気分
手の動きが活発になる
体温上昇・脈が速くなる
酩酊初期 日本酒(3合)
ビール大(3本)
ウイスキーシングル(6~7杯)
気が大きくなる
大声でがなり立てる
立てばふらつく
酩酊後期 日本酒(5合)
ビール大(5~7本)
ウイスキーダブル(5杯)
千鳥足
呼吸が速くなる
嘔気・嘔吐
泥酔期 日本酒(7合~1升)
ビール大(8~10本)
ウイスキーボトル(1本)
まともに立てない
意識混濁
言葉も支離滅裂
昏睡期 日本酒(1升以上)
ウイスキーボトル(1本以上)
揺り動かしても起きない
大小便はたれながし
死亡

急性アルコール中毒

急性アルコール中毒は、普通はアルコールの血中濃度が上がるまで30~60分ほどかかるところを、自分の許容量を越える量のアルコールを短時間で摂取することによっておこります。体内の血中アルコール濃度が一気に上昇し、「爽快期」「ほろ酔い期」を通り越して「泥酔期」「昏睡期」に至ってしまうことで、場合によっては呼吸困難も引き起こし、とても危険な状態になります。
急性アルコール中毒を起こした人がいる場合、直ちに救急車を手配します。また嘔吐した場合に誤って気道内に食物が流入してしまったり、窒息死を予防するため、顔を横に向けておいたほうがいいでしょう。
急性アルコール中毒は、死に至る場合もあるとても危険な状態です。くれぐれも「イッキ飲み」など無理な飲み方はしないようにしなければいけません。また無理に人にお酒を勧めることも絶対にしてはいけないことです。

未成年者がお酒を飲んではいけない理由は?

日本では20歳未満の飲酒は法律(「未成年者飲酒禁止法」)で禁じられています。でもなぜ成人はよくて未成年者は駄目なのでしょうか?
未成年者は成長期であり心身ともに未発達です。そのような時期にアルコールが体内に入るとそのアルコールを分解する体の機能が未熟なため、さまざまな問題が生じてくるのです。たとえば、脳細胞に悪影響を与えて知能(記憶力や集中力)の低下がおこったり、性腺が萎縮して性機能不全や生理不順になる可能性があるなど、健全な発育を阻害することになります。また、先にも述べた急性アルコール中毒になる危険性も高くなります。

未成年者の飲酒は法律で禁じられています