研究トピックス
理学・農学・工学・医学の融合による新たな学問分野
6学科でめざす「生物メカニズムの工学技術への応用」
各学科の研究をご紹介いたします!
生物理工学部 紹介動画
生物工学科
生物生産工学研究室
情報通信技術で植物の生産環境を改善し、生産性を高めるスマート施設園芸の実践
ハウスや温室などの施設を用いて園芸作物を生産する施設園芸、コンピュータやセンサを活用した環境制御システムで内部の環境を巧みに制御することにより、生産コストを低下しつつ収益性を高めることが可能です。ところが日本の施設は小規模で多数が点在しており、コストが高すぎてこれまで導入が進んでいませんでした。当研究室で考案したユビキタス環境制御システム(UECS)に、半導体技術の進歩で大幅に低コスト化した新しいデバイスを導入して、低コスト・高性能環境制御システムを開発しました。
他大学、農研機構、企業と協力し、宮崎県、山口県、岡山県、香川県、神奈川県、埼玉県の生産者施設で実証研究を実施中です。スマート施設園芸の実践により、日本各地にある特色ある施設で、消費地のさまざまなニーズに合った高品質な野菜や花を容易に生産できるようになります。
遺伝子工学科
発生遺伝子工学研究室
卵子を測って創って理解する
発生遺伝子工学研究室では、哺乳動物受精卵の発生を観察・操作して、生殖医療や再生医療、家畜繁殖・絶滅種の復活などに貢献します。観察には普通の顕微鏡だけでなく共焦点レーザー顕微鏡なども用いることで、例えば右の写真のように受精卵が分裂しているときのDNAの様子なども解析しています。撮った画像は、最新の画像処理技術を駆使してさまざまな現象を数値として表現します。また、学科内の別の研究室では、ゲノム解析や微量タンパク質の質量分析、それから得られた大量のデータをコンピューターを使って解析するバイオインフォマティクスなども使っています。それ以外にも、各種遺伝子組換え技術や効率的な細胞培養法の開発などを通しして、トータルとして科学・社会に貢献することをめざします。
共焦点レーザー顕微鏡でとらえたマウス受精卵の発生の様子。赤色はDNA、緑色は分裂装置です。写真の中の数字は観察開始からの(日数)、時間、分です。上段は生命誕生から最初の分裂を、下段はその後の卵割の様子を示しています。実際は5分間隔で4日間近く連続で観察をしています。
食品安全工学科
動物栄養学研究室
動物を通してヒトの健康を知る。
遺伝的に多様な形質を持つ動物を使うことで、ヒトの疾患がなぜ起こるのか、どうしたら病気を防ぐことができるのか?を研究しています。例えば写真左のマウスは、通常のマウスに比べて少し「食いしん坊」なため太りやすいので、食品の抗肥満効果を見ることができます。現在、私たちは製薬会社、食品会社と一緒に食品の持つ運動模倣効果を研究しています。また写真右のイノブタ(すさみ町で飼育)は、通常の豚に比べて太りにくく、筋肉内脂肪「サシ」が入りにくいことから、筋肉のエネルギー源である糖と脂肪酸が切り替わるしくみについて知ることができます。
生命情報工学科
生体信号解析研究室
先端技術で母体と胎児の健康状態を見守るシステムを創造!
近年、産婦人科医の減少や、定期検診だけでは発見困難な妊娠異常などの問題もあり、安心して出産できる医療システムの充実が望まれています。本研究室では、奈良県立医科大学らとともに、新たな計測技術を用いた在宅生体計測による、妊婦見守りシステムの開発に取り組んでいます(平成20~22年文部科学省、平成23年科学技術振興機構、平成25~29年文部科学省より支援)。
その成果として、妊婦腹壁に貼付した複数の電極から生体電位信号を計測し、最先端の信号処理技術(独立成分分析法)を駆使して、母体心電位と胎児心電位を分離することに成功しました。このシステムでは、さらに胎児心電位から胎児心拍数を計測し、心拍数の変動解析によって、妊婦並びに胎児の健康状態がチェックされます。計測データは、最終的に医療機関に送られて、医師が診断する仕組みになっています。まさに“生命のためのシステム”です。高齢出産など早産のリスクが高い妊婦が増える中、このシステムを用いて妊娠異常を予防できる日が来ることを夢見て、日々、研究に取り組んでいます。
人間環境デザイン工学科
人間環境デザイン工学科2年次カリキュラム
ユニバーサルデザイン・CAD演習I・II
人と生活機器のかかわりを“デジタルマネキン”で分析!
コンピュータ上にあらゆる人の身体形状を表現でき、ある姿勢をとらせて関節にかかる力学負荷も解析できる、最新のデジタルマネキンソフトウェアを、日本で初めて教室に導入しました。人間と生活機器・用具のかかわりや使いやすさについて、力学的に学習し、プロダクトデザインなどに生かすための演習科目「ユニバーサルデザイン・CAD演習」を、2011年度から当学科2年次で実施しています。国内でデジタルマネキンを学部の集合教育に使用した例はこれまでなく、その成果が注目されています。3年次以降も、配属研究室によっては卒業研究などで使用し、研究課題に沿ってより深く探究することができます。
医用工学科
医学シミュレーション研究室
安全な手術施行をめざして
~心臓手術のための教育システムの開発と応用~
航空機のパイロットは、実機を使用した訓練に先だって、シミュレータを使用して飛行トレーニングを行います。シミュレータによる教育の利点は、訓練者及びその対象となる人やモノを危険にさらすことなく、繰り返しトレーニングを行えることです。近年、「高機能患者シミュレータ」を中心としたシミュレーションを医学教育に取り入れる施設が増加しています。臨床工学技士が大きくかかわる開心手術においても執刀医・麻酔医・臨床工学技士の連携シミュレーショントレーニングが増えてきました。
しかしその機能はまだ十分とは言えず、手術環境そのものを再現できるシステムは多くありません。当研究室では、手術を安全に行える技術を効率よくトレーニングするための複合シミュレーションシステムを開発しています。同時に、シミュレーション教育は本当に有効なのかという課題に対して、大学病院などの臨床現場と共同で教育効果を検証する研究を行っています。